今日のおじさん、なに食べました? (仮)

妻の料理と、おじさんの毎日の記録です。ほんのり工学テイスト。

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包丁の刃を硬くする理由~1mm四方で100kgを受ける
【今日の料理】 2011/5/7 夕食
 娘(2.9ヶ月)の下痢は,だいぶ良くなりました.長丁場の構えだったのですが,案外すんなりと,治るかもしれません.
 しかし,病院でもらった薬(整腸剤)を,飲ませるのに一苦労でした.粉薬なのですが,水に溶かして飲ませると,吐いてしまいました.ごく少量の水と混ぜて,少しずつスプーンで口に入れると,吐き出すことがなく,何とかうまく飲めました.すごく嫌そうな顔をしていましたが.

★米飯

★みそ汁,えのき・まいたけ

★五目豆
 圧力鍋,加圧1分.今日の五目豆は,味付けを忘れてしまいました(ダシだけで炊いた).妻には,すこぶる不評でしたが,「料理は引き算」と,誰かが言っていました.色々な食材や調味料を追加したい気持ちを抑えてこそ,素材本来の味を引き出せるのではないでしょうか.妻は,「物事の理(ことわり)」が,分かっていないように感じます.
 ちなみに,今回の五目豆には,いつもの材料に加えて,茄子を追加しています.

★豚肉白菜炒め
 昼食の残り.

★白菜浅漬け
 塩・酢・塩昆布・七味で,漬けたもの.

★トマト

★おでん
 昨晩の残り.

【今日の料理工学】 包丁の刃を硬くする理由~1mm四方で100kgを受ける
 今日も,包丁の素人が,包丁について書きます.

 前回の結論は,材料表面の切断には,刃の先端が鋭利なことが重要で,刃の材料の硬度や剛性はほとんど関係ない,ということでした.しかし,実際には,包丁の刃は,硬度が高い材料を用いています.これは,切断の際や,研磨の際に,刃に加わる応力によって,刃が損傷するのを防ぐためと考えられます.一般に,硬度が高い材料=強度が高い材料です.したがって,硬度が高い材料を使えば,刃の損傷が生じにくくなります.

 今回は,切断の際に,包丁の刃には,どれくらいの応力が加わるのか,考察してみましょう.
 前回と同様に,以下を仮定します.
 ・刃の先端の断面形状は,半径Rの単一円弧形状とする.
 ・長手方向については,一様な断面形状とする.
 ・包丁を材料に対して真下に静かに押す,という切断方法をとる.
 ・包丁の刃,切断される材料は,フックの法則が成り立つ(応力とひずみが比例する)材料だとする.

 そうすると,前回と同様に,Hertz(ヘルツ)の式によって,接触部の最大接触応力を,計算できます.すなわち,下図1のモデルにおいて,式1~式3が成り立ちます.
<図1>
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<式1>
z20110507s1.jpg

<式2>
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<式3>
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 ここで,
 W:接触荷重[N]
 L:接触部の長手方向(紙面垂直方向)の長さ[mm]
 b:接触部の半幅[mm]
 R:等価半径[mm]
 E:等価縦弾性係数[N/mm^2]
 RⅠ,RⅡ:物体Ⅰ,Ⅱの曲率半径[mm]
 EⅠ,EⅡ:物体Ⅰ,Ⅱの縦弾性係数[N/mm^2]
 νⅠ,νⅡ:物体Ⅰ,Ⅱのポアソン比[null]

 式1~3から,最大接触応力Pmaxは,次式4のようになります.
<式4>
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 前回同様,具体的な数値を用いて,計算してみます.以下の値を用います.
●包丁の刃
 ・縦弾性係数:EⅠ=210000N/mm^2 …鋼材の値
 ・ポアソン比:νⅠ=0.3 …鋼材の値
 ・曲率半径:RⅠ=0.001mm~0.05mmの範囲で計算

●切断される材料
 ・縦弾性係数:EⅡ=1000N/mm^2 …ポリエチレンの値
 ・ポアソン比:νⅡ=0.3 …一般値
 ・曲率半径:RⅡ=∞ …平面とする
 ・材料の長さ:L=100mm

 切断荷重Wは,固いものを切断するときに体重をかけながら切ったとして,W=100N(≒10kgf)としました.

 下図2に,計算結果を示します.横軸は刃の先端半径RI,縦軸は最大接触応力Pmaxです.
<図2>
z20110507z2.jpg
 
 包丁の刃の先端半径を数μm程度と仮定すると,最大接触応力は,およそ1000N/mm^2程度と,推定されます.1平方mmに,1000N≒100kgfですから,かなり厳しい条件です.
 なお,前回の検討では,先端半径を数十μmと仮定していましたが,文献[1]等の記述から,数μmが妥当と考えました.
[1]井上;理美容鋏の切断特性と切れ味の定量的評価に関する研究,早大博士論文,(2006)
 http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/5343

 刃が破損しないためには,接触応力<鋼材の強度,となる必要があります.鋼材の強度としては,引張強度が一般的です.しかし,包丁用の鋼材では,硬さで代表されることが多いようです.鋼材の引張強さσb[N/mm^2]と,硬さ(ロックウェル硬さ・Cスケール)とは,次式5で換算できます[2].

[2]畑村編;続・実際の設計,日刊工業新聞社,(1992)

<式5>
 σb[N/mm^2]=31×HRC 

 また,包丁に用いられる鋼材の硬度は,HRC=60と仮定します.文献[3]を参考にしました.

[3]日立金属;YSS高級刃物鋼カタログ,(2006)
 http://www.hitachi-metals.co.jp/prod/prod19/p19_13.html

 HRC=60では,式5から,引張強度σb=1900N/mm^2,となります.先端の最大接触応力は1000N/mm^2と推定されますから,十分な強度があると言えます.

 この結果だけ見ると,もっと軟らかい材質でも構わないのでは?と思うかもしれません.しかし,実際には,以下の事情がありそうです.
)実際の使用では,荷重Wが100Nより大きいことがある.また,衝撃力が加わることもある.
)疲労破壊(繰り返し荷重による破壊)をしないためには,強度に余裕を持つ必要がある.
)硬度を高めることで,耐摩耗性を向上する効果も望める.
)軟らかい材質だと,刃付けをするときの,研磨加工がしにくいor不可能になる.

 以上のような事情から,包丁の刃には,硬い材料が用いられるのだと,考えられます.

(補足)
 接触応力>引張強度で,材料の破壊が生じるというのは,厳密には,必ずしも正しくありません.破壊の発生条件としては,最大主応力説,最大せん断応力説,せん断ひずみエネルギー説などがあります.いずれの説でも,応力の1方向の成分だけでなく,各方向の成分を考慮する必要があります.
 ただ,オーダー(桁数)的には,接触応力>引張強度としても,そう大きな誤りではないので,上では,この条件で破壊有無を判定しています.


【今回の結論】
 包丁の刃の先端には,切断時に大きな応力が加わります.このため,刃の破損を防ぐためには,強度が高い(=硬度が高い)材料が必要となります.


【バックナンバー】
包丁編・前の記事:硬度と切れ味
包丁編・次の記事:100円包丁の断面

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