今日のおじさん、なに食べました? (仮)

妻の料理と、おじさんの毎日の記録です。ほんのり工学テイスト。

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ステンレス包丁は鉄包丁より硬度が劣る?~硬度の決め手は炭素量
【今日の料理】 2011/5/14 昼食
 今日は,私の父母を招き,娘(3ヶ月)の,「お食い初め」を行いました.「お食い初め」は,子供が一生食べ物に困らないよう,子供に初めて食べ物を与える(ふりをする)儀式,とのことです.
 貧乏な我が家に,「鯛のおかしら付き」が,やって来ました!ありがとう,娘!産まれてきてくれて,ありがとう!娘のおかげで,鯛が食せます!

 また,だいぶ遅くなってしまいましたが,近所の「高城神社」で,「初宮参り」を行いました.ここで,お食い初めの箸と石を頂きました.しかし,既にお食い初めが終わった後でしたので,使い道がありません.
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★赤飯
 私の母が,作って持ってきてくれました.ささげは,国産だと味が違う,と言っていました.

★吸いもの,卵・わかめ

★焼き鯛,おかしら付き
 地元・熊谷の老舗百貨店「八木橋」で,1週間ほど前に頼んでおいたものです.このボリュームで,2000円は安いと思います.自分では,とてもこんなに上手に焼けません.
 鯛の淡白な身と,皮に付いた塩気が良く合い,とてもおいしかったです.

★ふきと厚揚げの炒め煮
 ふきは,エグみが強かったのですが,重曹(ベーキングパウダー)を入れて茹でたところ,エグみが抜けました.

★かぶとキャベツの浅漬け,塩昆布入り

★かぼちゃ煮

★母からの差し入れ
 ・牛肉佃煮
 ・ミニトマト

【今日の料理工学】 ステンレス包丁は鉄包丁より硬度が劣る?~硬度の決め手は炭素量
 前回は,包丁の刃に用いられる材質として,炭素鋼について,考察しました.

 しかし,炭素鋼の包丁(鉄の包丁)は,錆びるのが弱点と言われています.私は,実際に炭素鋼の包丁を持ったことはありません.が,妻は,小さい頃に炭素鋼の包丁が家にあったとのことです.いわく,「それはもう錆びて錆びて,すごく嫌だった」とのことです.このため,我が家では,今後とも,炭素鋼の包丁を使うことは,おそらくないでしょう.
 錆びにくい包丁といえば,ステンレスの包丁が,一般的です.ステンレスの包丁の刃は,「ステンレス鋼」でできています.今回は,ステンレス鋼について,お話します.

 ステンレス鋼は,鋼の一種で,概ね以下のように定義されます[1].
 「耐食性を向上させる目的で,Crを約11%以上含有させた鋼」
 Crは,材料表面に耐食性の高い緻密な皮膜(不動態皮膜)を作るので,耐食性が高いのです[1].

[1]日本金属学会,鉄鋼材料,(1985)


 さて,ステンレスの包丁というと,「錆びにくいが,鉄の包丁ほどは切れない」というイメージがあるようです.これは,いったい何故でしょうか.

 まず,硬度を見てみます.

 鋼材各社のカタログやHPを見て,炭素鋼およびステンレス鋼を,ピックアップしました.そして,各鋼材の炭素量[wt%C](規格中央値),焼入れ硬度[HRC](最高値,焼戻しなし)を調べました.以下の通りです.

 ●JIS 炭素工具鋼 …[2]
 ・SK120 1.2%C,HRC63  
 ・SK105 1.05%C,HRC63
 ・SK95 0.95%C,HRC62
 ・SK85 0.85%C,HRC62
 ・SK75 0.75%C,HRC62
 ・SK65 0.65%C,HRC59

 ●JIS 機械構造用炭素鋼 …[2]
 ・S35C 0.35%C,HRC46
 ・S45C 0.45%C,HRC53
 ・S55C 0.55%C,HRC55
 ※機械構造用炭素鋼」は,普通刃物に用いるものではありませんが,比較のために調べました.

 ●JIS マルテンサイト系ステンレス鋼 …[3]
 ・SUS410 0%C,HRC43
 ・SUS420J1 0.2%C,HRC51
 ・SUS420J2 0.3%C,HRC57

 ●非JIS ステンレス鋼
 ・EN1.4116 0.5%C,HRC60 …[3]
 ・V金10 1%C,HRC60 …[4]
 ・12C27 0.6%C,HRC61 …[5]
 ・19C27 0.95%C,HRC62 …[5]

[2]日新製鋼;熱間圧延特殊鋼,カタログB-01,(2009)
 http://www.nisshin-steel.co.jp

[3]JFEスチール;JFEの刃物用ステンレス鋼,Cat.No.G1J-017-00
 http://www.jfe-steel.co.jp  

[4]武生特殊鋼材;オリジナル刃物鋼
 http://www.e-tokko.com/original_list.htm

[5]Sandvik;Products-knife steel
 http://www.sandvik.com

 上の結果から,横軸に炭素量[wt%C],縦軸に硬度[HRC]をとったグラフを作りました.
 結果は下図1の通りです.図では,高炭素鋼,機械構造鋼,ステンレス鋼(図中はSUS系と記載)で,色を分けてあります.
<図1>
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 この結果から,以下のことが言えそうです.
 ・炭素鋼もステンレス鋼も,炭素量の多いほど,硬度が高い.
 ・炭素量≧約0.5%では,炭素量が同じならば,炭素鋼とステンレス鋼とで,硬度に大差はない.
 このことから,ステンレス鋼でも,炭素鋼に匹敵する硬度を得られると,想像されます.
 なお,炭素量が小さいときにステンレス鋼の硬度が高いのは,①合金元素(Cr,Mo,Vなど)が入ることで結晶が歪んで塑性変形しがたくなる(固溶強化),②炭素以外の合金元素(Cr,Mo,Vなど)が硬い炭化物を作る(分散強化),などの理由によると思われます.

 ここで,前回までの考察から,以下のことが分かっています.
 ・軽く切るためには,先端が鋭利なほど良い.
 ・先端の鋭利さを維持するためには,硬度とじん性のバランスが重要.

 「硬度とじん性のバランス」と書きました.しかし,巷では,炭素鋼の包丁が,切れ味の長続き性能において高い評価を得ているようです(※).このことから,包丁の先端の鋭利さを保つためには,「じん性」よりも「硬度」が,より重要なのかもしれません(実用されている鋼のじん性と硬度の範囲では,硬度を優先したほうがよいのかもしれません).したがって,上の2文は,次のように書き換えられそうです.
 ・軽く切るためには,先端が鋭利なほど良い.
 ・先端の鋭利さを維持するためには,硬度が特に重要.

 こうしてみると,「ステンレス包丁が鉄包丁より切れ味が劣る」原因としては,以下がありそうです.
 a)ステンレス包丁は,硬度は鉄包丁と同等だが,先端を鋭利にしにくい.
 b)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,(意図的に)硬度を低くしているため,先端を鋭利にしにくい.
 c)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,(意図的に)硬度を低くしているため,先端の鋭利さを維持しにくい.

 次回は,これらの原因について,詳しく考察してみようと思います.

(補足)
 上述では,原因a)~c)としました.しかし,抜けがありました.以下のように,訂正します.
 a)ステンレス包丁は,硬度は鉄包丁と同等だが,先端を鋭利にしにくい.
 b)ステンレス包丁は,硬度は鉄包丁と同等だが,先端の鋭利さを維持しにくい.
 c)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,(意図的に)硬度を低くしているため,先端を鋭利にしにくい.
 d)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,(意図的に)硬度を低くしているため,先端の鋭利さを維持しにくい.

(補足2)
 ※印の箇所「,巷では,炭素鋼の包丁が,切れ味の長続き性能において高い評価を得ているようです」は,当方の勘違いでした.炭素鋼とステンレス鋼で,どちらが切れ味を維持しやすいかについて,定まった評価は無いようです.したがって,上述の補足の原因a)~d)に加えて,以下が追加されそうです.
 e)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,じん性が低いため,先端を鋭利にしにくい.
 f)ステンレス包丁は,鉄包丁よりも,じん性が低いため,先端の鋭利さを維持しにくい.
 じん性が低いと,耐衝撃性が劣りますから,上のような現象も,起こるかもしれません.

(補足3) 2012/4/7
 包丁の切れ味の長続き性能を左右するのは、「強度」であり、「硬度」や「耐摩耗性」ではないと、私は考えています。実際の包丁の、一般的な使用状況を考えると、包丁とまな板の繰り返し衝突によって、刃先が塑性変形したり、疲れ破壊するのが、包丁の切れ味低下の主要な原因だと思われるからです。
 にもかかわらず、包丁の切れ味の長続き性能を評価するために、「CATRA試験機」や「本多式切れ味試験機」などが用いられる例を、たびたび見かけます。これらの試験機は、包丁とまな板の衝突を、まったく盛り込んでいない試験機です。皮むき専用ならばともかく、通常の包丁の使用状態とは、かけ離れています。正当な評価ができるとは、思えません。
 このへんの内容は、別の記事に詳述してあります(→こちら)。


【今回の結論】
 ステンレス鋼でも炭素鋼でも,炭素量が同等であれば,両者の硬度に大差はないと考えられます.


【バックナンバー】
包丁編・前の記事:焼入れの仕組み
包丁編・次の記事:ステンレス包丁の課題

包丁編・一覧へ

引越し前の住所(BIGLOBE)で頂いたコメントです.

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炭素鋼の方が長切れするというのはどこでごらんになったんでしょうか。個人的にはそういう認識はなかったし、評判も聞かないですねー。

長切れについてはたとえば、理美容シザーに使われているコバルト基合金(ステライトなど)が長切れするという評判なんですけど、HRC50未満とすごく柔らかいです。
チタンも硬度は低いけど削りにくい、磨耗しにくいです。
包丁はまな板との衝突による刃先の劣化が多いみたいだから硬度が重要になりそうで、ハサミを引き合いに出すのは乱暴かもしれませんけど、硬度以外にも長切れ性能に大きく影響する要素はいろいろあるみたいです。

それから、前日のブログに書かれている
『「錆びにくいが,鉄の包丁ほどは切れない」というイメージ』
は、鉄の包丁ほどは切れないステンレス包丁の方がたくさん売れてるからじゃないかと思っていますがどうでしょう。
HRC60以上のステンレス包丁を使ってる人ってあんまりいないと思うんです。洋食のプロがよく使ってると言われるグレステンなんかでも、たぶん60未満です。
いっぽう、炭素鋼は白二でも60以上です。そして炭素鋼は逆に、これより安い鋼材の物を敢えて買う人なんかほとんどいません。
つまり白二以上の包丁とスーパー3000円ぐらいまでで売られているステンレス包丁を比べて、「錆びにくいが,鉄の包丁ほどは切れない」と評価されてるんじゃないかなーと思ってます。
キンキンに研いだら青紙スーパーよりZDP189とかHAP72の方が切れ味がいいかもしれません。
BRO
2011/05/19 00:44

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 「炭素鋼のほうが長切れする」は,当方の勘違いだったようです.ご指摘ありがとうございます(折を見て修正しておきます).

 また,ステンレス包丁の切れ味が鉄包丁より劣るというイメージは,ご指摘の通り,そもそも比較の対象が不公平なことから,生じているものと,私も思っています.
 ステンレスは,かなり多くの種類がありますので,ステンレスをひとくくりにしてしまって,「ステンレス包丁と鉄包丁を比較する」ということ自体が,ナンセンスなのではないかと思っています.
マツジョン
2011/05/19 23:59

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硬度に言及した記述はあったけど鋼材の耐摩耗性はなんで言及しないの?
いくら硬度がいっしょでも黄紙、青紙1号、青紙スーパー、S30V、440C、鋼材が違えば耐摩耗性が変わるし単純に硬度での比較は不可能でしょ。それにステンレスはサブゼロ処理などで硬度をHRC60以上にできるものも普通にあるからすべてのステンレス包丁が低硬度のような認識も間違ってるかと。
一般にステンレスの包丁は白二などの炭素鋼と比べると研ぎにくい&大昔のステンレス包丁が粗悪だったころのイメージで切れないと評価されてるだけだと考えてるけどそのあたりはどうだろう。

S30V
2011/05/30 14:49

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>S30Vさん
 コメントありがとうございます。
 包丁に関してはド素人の私が、なんとなく始めてしまった包丁シリーズの記事ですが、思いがけず多数の方がご覧下さいまして、大変感謝しております。

 まず、耐磨耗性(耐摩耗性)に関してですが、当ブログ「なぜ包丁は研がなければいけないのか?」で、ごく軽くですが、触れています。ここで、包丁では、まな板との衝突による破損が切れ味低下の主要因と推定し、以降では磨耗はバッサリ切り捨てています。この仮定は、私の独断ですので、もしかすると不合理だったかもしれません。
 ところで、アブレシブ磨耗は硬度で、凝着磨耗は強度で、概ねの磨耗の傾向が支配されます。さらに、鋼材では、強度は硬度にほぼ比例します。したがって、耐磨耗性を示す代表特性として硬度をとっても、大きな間違いではないと考えております。もちろん、個々の材質によって、硬度や強度の割りに磨耗しにくい、ということは、あろうかと思われます。しかし、このへんの詳細は、残念ながら、私の知識で解説可能な範囲を外れてしまいます。

 次に、ステンレス鋼の硬度についてです。この記事の趣旨は「世の中で、ステンレス包丁は鉄包丁より硬度が劣るようなイメージがある(少なくとも私はそう思っていた)が、そんなことはない。」というものです。次の記事「ステンレス包丁の欠点は」と合わせてご覧くださると、趣旨が伝わりやすいかと思われます。題目を「ステンレス包丁は鉄包丁より硬度が劣る」としてしまったために、誤解を与えてしまったかもしれません。
 「貧乏だけどいい包丁が欲しい」で述べているように、私が包丁を選ぶならば、迷わずステンレス包丁を選びます(VG10を狙っています)。
マツジョン
2011/05/30 20:34
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