今日のおじさん、なに食べました? (仮)

妻の料理と、おじさんの毎日の記録です。ほんのり工学テイスト。

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包丁の切れ味を定量評価するには?~CATRA試験機
【今日の料理】 2011/11/8 夕食
 今日は,娘(8.9ヶ月)と妻は,ベビーサイン(赤ちゃん手話)教室でした.その間,昼寝をしていたら,帰ってきた妻に「いつも寝てばかりいる」と怒られてしまいました.怠惰な夫で,申し訳ありません.
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★米飯

★魚介ダシダスープ,ほうれん草・人参・もやし

★ヒラメのムニエル
 1切れ=140円でした.安いだけあって,身が薄かったですが,味は良かったです.

★カブ煮の残り
 以前の残り.カブと挽肉を煮たものですが,カブがなくなって,汁と挽肉だけ残ったものです.

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【今日の料理工学】 包丁の切れ味を定量評価するには?~CATRA試験機
 前回は,「刃が自己再生する包丁」を紹介しました.この包丁の商品説明[1]を見ると,「切れ味試験」なる試験結果のデータが,グラフで掲載されていました.これは,切れ味を定量的に評価するものと思われますが,どういったものか,気になります.
[1]穂岐山刃物;包丁‐SAKON+
http://www.hokiyama.com/ja/index.html


★刃物の切れ味を評価する「CATRA試験機」
 掲載されているグラフは,下図1のようなものです(文献[1]のデータを目視で読み取り,当方が再描画).このグラフのタイトルは,「ISO準拠 英国CATRAによる切れ味試験」となっていました.刃が自己再生する包丁「SAKON+」と,市販のセラミック包丁,市販のステンレス包丁を,比較しています.
<図1>
20111108z1.jpg
 英国「CATRA」とは,「Cutlery & Allied Trades Research Association」のことのようです.日本語に直訳すれば,「刃物と関連商売の研究組合」でしょうか.ここでは,包丁などの刃物の切れ味試験を行う装置を,取り扱っているようです[2].
[2]CATRA;KNIFE & BLADE CUTTING TEST MACHINE 
http://catra.org/pages/products/kniveslevel1/slt.htm
 この切れ味試験装置は,「knife sharpness and life tester」(包丁の切れ味・寿命試験機)と呼ばれるそうです.「CATRA TESTER」(CATRA式試験機)と呼ばれることもあるそうです.また,この切れ味試験は,ISO規格にもなっているようです(ISO 8442.5:2005).その道では,有名な試験装置なのかもしれません.
 下は,CATRA試験機の試験の様子(動画)です.

 刃を上に向けて,包丁を置きます.包丁の上には,紙束が設置されます.この紙束は,切れ味試験専用のもののようです.摩耗を緩やかに生じさせる目的で,5%のシリカ(SiO2,二酸化ケイ素)を含んでいます.寸法は,厚さ0.31mm×幅10mm×長さ625mmです.
 紙束を,一定の荷重で包丁に押し付けるとともに,包丁を前後させます.すると,紙束が切れます.包丁の切れ味が良いほど,多くの紙束が切れることになります.すなわち,切れ味が良いほど,紙束を押し付ける台が長い距離を移動します.この距離が,「cut stroke」(切断長さ)です.装置では,この切断長さを,自動的に測定します.
 この動作(紙束を押し付けて包丁を前後させる)を,何度も繰り返します.各回において,切断長さを測定します.横軸に「これまでの総切断長さ」を,縦軸に「各回の切断長さ」をとると,前述の図1のようなグラフが完成します.


★切れ味試験の問題点は
 この切れ味試験は,感応評価になりがちな「切れ味」の評価を,定量的に行えるという点で,優れたものと思われます.
 ただ,この切れ味試験結果から,実用上の包丁の耐久性(切れ味の長持ちする程度)を推定する場合には,次の点に注意が必要です.
a)試験と実際では,刃先の損傷モードが異なること.
b)刃先の硬度によって,刃先の摩耗形態が異なること.

 以下,詳しく述べます.
a)試験と実際では,刃先の損傷モードが異なること.
 この切れ味試験では,刃先の損傷モードは,主に「摩耗」であると考えられます.比較的ゆっくりしたスピードで,比較的柔らかい材質(紙)に,包丁を押し当てているためです.
 実際の使用では,包丁は,まな板に叩き付けられたり,魚の骨や果物の種,野菜に付着した砂などにぶつかったりします.このため,刃先の折損が,通常の使用で,頻繁に発生すると考えられます.下図2は,私の所有するステンレス包丁に発生した,刃先の折損です.
<図2>
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 まとめると,
 ・切れ味試験では,主に「摩耗」に対する耐久性を調べます.
 ・実際の使用では,摩耗のほかに,「折損」も頻繁に発生する.
 したがって,切れ味試験だけから,包丁の実際の耐久性を予測するのには,限界があると思われます.


b)刃先の硬度によって,刃先の摩耗形態が異なること.
 この切れ味試験では,切断する試料として,「5%のシリカを含む特殊紙」を用います.シリカとは,二酸化ケイ素(SiO2)です.自然物としては,石英や水晶として知られています.つまり,この特殊紙には,砂粒のようなものが入っています.
 シリカを入れる理由は,「緩やかな摩耗因子(原文:mild wearing effect)」として,とされます[2].つまり,普通の紙を切るよりも,試験を速く進めるために,シリカを添加しているのだと推察されます.このように,短期間で結果が出せるように条件を工夫した試験を,「加速試験」と呼びます.
 下図3のように,ステンレス鋼の包丁が,特殊紙を切り進むときを考えます.ステンレス鋼よりも,シリカのほうが硬いです.このため,刃先がシリカにぶつかると,刃先が切削されて,大きく摩耗します.このように,自分よりも硬い物質と摩擦して生じる摩耗を,「アブレシブ摩耗」と呼びます.
<図3>
20111108z2.jpg
 次に,下図4のように,セラミックの包丁が,特殊紙を切り進むときを考えます.セラミックは,種類によっては,シリカを超える硬さを持っています.この場合には,刃先がシリカにぶつかっても,容易には切削されず,ほとんど摩耗しません.すなわち,アブレシブ摩耗が生じないのです.(摩耗は生じるのですが,「凝着摩耗」という摩耗で,アブレシブ摩耗よりも1桁~数桁,摩耗量が小さい形態の摩耗です.凝着摩耗は,ステンレス包丁の場合でも生じます.)
<図4>
20111108z3.jpg
 つまり,シリカの硬さを超えるような刃先を使った場合,アブレシブ摩耗がほとんど生じません.

 実際の包丁の使用条件を考えると,アブレシブ摩耗は,ほとんど生じないだろうと推察されます.砂粒のような硬く細かい物質が多量に存在する中を,包丁が切り進むような使用方法は,考えにくいからです.
 以上をまとめると,
・ステンレス鋼の包丁:アブレシブ摩耗のため,実際よりも速く摩耗する.
・セラミックの包丁 :アブレシブ摩耗は生じず,実際と似た速度で摩耗する.
 つまり,この切れ味試験は,セラミック包丁にとって,有利な結果を与えます.


★比較データは有用か?
 以上を踏まえて,図1に示された,各包丁での切れ味試験の比較データを,検討してみます.図1に示された,各包丁の刃の材質を,次のように推定します.
 ・Sakon+(刃が自己再生する包丁)
  コーティング材質:TiC(チタンカーバイト,炭化チタン)
 ・セラミック
  ZrO2(ジルコニア),京セラZ-701N(灰黒色)
 ・ステンレス
  高炭素ステンレス鋼,表面ロックウェル硬さHRC60

 そうすると,シリカおよび各包丁の刃の硬度(ビッカース硬さ)は,次のようになります.
 ・シリカ       :11[GPa](≒1100[kgf/mm2])…[3]
 ・Sakon+コーティング:31[GPa](≒3200[kgf/mm2])…[4]
 ・セラミック     :13[GPa](≒1300[kgf/mm2])…[5]
 ・ステンレス     :6.8[GPa](≒700[kgf/mm2])…[6]
[3]MEMSnet;Material-Silicon dioxide,bulk
 http://www.memsnet.org/material/silicondioxidesio2bulk/
[4]須藤;機械材料学,コロナ社,(1985)
[5]京セラ;セラミックス 材料特性表
http://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/product/pdf/material.pdf
[6]鍋屋バイテック;硬さ換算表
http://www.nbk1560.com/technical/pdf/724.pdf

 Sakon+とセラミックでは,シリカの硬度を超えています.すなわち,アブレシブ摩耗が生じない可能性が高そうです.一方,ステンレスはシリカの硬度より低いですから,アブレシブ摩耗が生じます.つまり,図1のデータでは,推定される摩耗形態は,次の通りです.
 ・自己再生包丁「Sakon+」:凝着摩耗
 ・セラミック包丁    :凝着摩耗
 ・ステンレス包丁    :アブレシブ摩耗
 ステンレス包丁だけ,アブレシブ摩耗です.摩耗形態が凝着摩耗であるSakon+やセラミックに比べて,耐久できる回数が著しく短くなって,当然です.このような比較は,なんとも不公平に思えます.


実際の耐久性を推定するときの注意点
 実際の使用と切れ味試験で,損傷モードの違いをまとめたのが,下表1です.
<表1>
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 この表より,切れ味試験結果から実際の包丁の耐久性を推定する際には,次の点に注意が必要です.
・実際の使用では,刃先の主な損傷モードは,折損と摩耗である.これに対して,切れ味試験では,摩耗だけを重視している.したがって,耐久性を過剰に評価してしまう可能性がある.特に,折損に弱い包丁(セラミック包丁の一部など)では,折損が耐久性の決定要因となりそうだが,これを考慮できない.
・ステンレス包丁とセラミック包丁(コーティング包丁含む)では,摩耗形態が異なる.すなわち,ステンレス包丁ではアブレシブ摩耗,セラミック包丁では凝着摩耗が,主な摩耗形態となる.アブレシブ摩耗は,凝着摩耗に比べて,1桁~数桁,摩耗量が大きい.このため,切れ味試験では,セラミック包丁の耐久性を,過大評価する傾向がある.
 摩耗でなく折損に注目した耐久性評価方法が,望まれるところです.


 今回紹介した切れ味試験は,刃物の切れ味を定量的に評価する,優れた方法だと思います.鋼材の包丁同士で,材質や刃先形状の違いによる耐久性を比較するには,とても有用だと思われます.
 しかしながら,上述の通り,試験結果を実際の耐久性に関連付けるときには,十分な考察が必要だと思います.


 次回は,包丁の刃先の形状(ノコ刃)について考察します.


(補足)
 日本では,切れ味の評価には,「本多式切れ味試験機」というものが,よく使われているようです[7][8].この装置は,CATRA試験機と原理的にはほぼ同様のようですが,薄い普通紙(厚さ約0.04mm,シリカ混入なし)を使用しているようです.
[7]ヤクセル;今月の特集,2007年8月
http://www.yaxell.co.jp/special/special.php?id=20070801130107
[8]マサヒロ;包丁の切れ味について
http://www.masahiro-hamono.com/story/story03.html


【今回の結論】
 包丁の切れ味を定量的に評価する試験機として,「CATRA式試験機」があります.
 CATRA式試験機による切れ味試験の結果から,実際の耐久性を予測する際は,次の点に注意を要します.
 ・切れ味試験では,損傷形態として摩耗を重視し,折損をあまり考慮していないこと.
 ・ステンレス包丁とセラミック包丁とでは,摩耗の形態が異なり,セラミック包丁に有利な結果になりやすいこと.


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