今日のおじさん、なに食べました? (仮)

妻の料理と、おじさんの毎日の記録です。ほんのり工学テイスト。

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セラミック包丁は切れ味が長持ち?~問題は刃こぼれ
【今日の料理】 2011/1/20 夕食
 今日は,熊谷は朝から雪でした.かなりの勢いで降っており,積もるかと思ったのですが,昼前には,やみました.雪が積もると,いろいろと厄介ですので,ひと安心です.
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★米飯

★和風スープ,卵・ナス・エノキ

★軟骨ソーキ
 昨日,「サイボクハム」で買った,豚バラ軟骨です.妻の料理です.妻いわく,「最初に茹でた後の臭みを,まったく感じなかった」とのことです.
 食べてみても,臭みがまったくなく,脂っこさも感じず,とても美味でした.良い肉は,違うのですね.

★ほうれん草おひたし

★キムチ

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【今日の料理工学】 セラミック包丁は切れ味が長持ち?~問題は刃こぼれ
 前回に続いて,包丁の話です.

 今回は,「セラミックの包丁」の切れ味の持続性能について,考えてみます.


★セラミック包丁の切れ味試験データ
 セラミックの包丁は,切れ味を長く維持できる,と言われることがあります.例えば,文献[1]では,次の記述があります.
 「ファインセラミックスは金属に比べ非常に硬いので,耐摩耗性にも優れ,心地良い切れ味が長く持続します.」
 (※注:ファインセラミックスとは,工業用のセラミックのことです.)
[1]京セラ;セラミックキッチン用品-ファインレジェンド
http://www.kyocera.co.jp/prdct/fc_consumer/kitchen/more/fine_legend.html

 この記述の根拠として,下図1のようなグラフが,掲載されています.この図は,文献[1]のデータを目視で読み取って,当方が再度プロットしたものです.(著作権が気になるため,そのまま転載するのを避けています.)
<図1>
z20120120z11.jpg
 このグラフは,「岐阜県機械材料研究所」の「切れ味試験」の結果だそうです.明示されていませんが,おそらく,「本多式切れ味試験機」による試験結果だと思われます.
 「本多式切れ味試験機」の概要を,下図2に示します.
<図2>
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 本多式切れ味試験機では,新聞紙相当の紙の紙束を用います.包丁の上に紙束を配して,紙束を往復させます.紙が何枚切れるかで,切れ味を評価します.図1のグラフでは,横軸が切断の実施回数,縦軸が各切断時に切断できた紙の枚数です.何度も切断を繰り返すと,包丁の切れ味は,徐々に落ちていきます.
[2]マサヒロ;包丁の切れ味について
http://www.masahiro-hamono.com/story/story03.html
 図1には,次の3つの包丁のデータが示されています.
 ・セラ:京セラ製,セラミックの包丁
 ・SUS :他社,ステンレス鋼の包丁
 ・鋼 :他社,炭素鋼のナイフ
 これらのデータを比較すると,セラミック包丁の切断枚数は,他の包丁より多いです.また,切断を繰り返しても,切断枚数はあまり減りません.このデータを持って,「セラミック包丁は切れ味を長く維持できる」と,言っているようです.


★「セラミック包丁の切れ味は長持ちする」と言えるか?
 図1のデータは,次の2つの点で,あまり信用に足らないと,私は思います.
 a)3種類の包丁の違いが,刃先形状によるものか,材質によるものか,はっきりしない点.
 b)試験方法が,実際の包丁の使用方法から,かけ離れている点.

 それぞれ,詳しく説明してみます.

a)3種類の包丁の違いが,刃先形状によるものか,材質によるものか,はっきりしない
 包丁の切れ味は,刃先の形状(主に先端半径と,刃先の角度)で決まります(→過去の記事).刃の材質には,ほとんど依存しません(→過去の記事).
 3種類の包丁のデータを見ると,1回目の切断から,切断枚数に大きな違いが出ています.すなわち,
 ・セラミック:約80枚
 ・ステンレス:約60枚
 ・炭素鋼  :約30枚
 確かに,1回目の切断の間にも,摩耗は進行します.しかし,たった1回の切断で,これほどの差が出るとは,考えにくいです.包丁ごとに刃先の形状が異なる可能性が高そうです.おそらく,セラミック包丁に比べて,残る2つの包丁は,刃先の先端半径が大きいか,刃先の角度が大きいのだと,推察されます.(文献[1]の説明では,「A社ステンレスナイフ」,「B社鋼ナイフ」と書かれていて,刃先形状が同じとも,違うとも,書かれていません.)
 
 このように,3つの包丁の刃先形状が不明ですので,図1のデータから,必ずしも「セラミック包丁は切れ味が長持ちする」とは,言えません.単に,このセラミック包丁の初期の刃先形状が,他の2つの包丁よりも,鋭利だっただけかもしれません.
 

b)試験方法が,実際の包丁の使用方法から,かけ離れている
 図1のデータは,「本多式切れ味試験機」で取得したものと,推定されます.この試験機は,図2のように,紙束を繰り返し切断するものです.
 この試験機では,実際の包丁と,使用条件との大きな違いがあります.すなわち,「まな板」がないことです.実際の包丁は,使用中,まな板に頻繁に打ち付けられます.この打ち付けによって,刃先には大きな力が発生します.この力によって,「刃こぼれ」が生じます.下図3は,実際の包丁の刃こぼれの例です.
<図3>
z20120120z21.jpg
 つまり,実際の包丁では,次の2つの損傷形態が存在します.
 ・食材を繰り返し切断することによる,「摩耗」
 ・まな板と衝突することによる,「刃こぼれ」
 前回の考察からすると,この2つのうち,「刃こぼれ」が,主要な損傷形態である可能性が高そうです.(材料の強度が1割しか違わない包丁でも,切れ味の持続性に2~3倍の差が見られた.摩耗が主要な損傷形態ならば,摩耗量は強度にほぼ比例するので,これほどの差異は現れないはず.)

 「本多式切れ味試験機」では,まな板との衝突がありません.このため,摩耗と刃こぼれのうち,摩耗しか評価ができないのです.実際の包丁では,「刃こぼれ」が主要な損傷形態と考えられるので,これは大きな欠陥と思われます.

 以上のように,図1のデータは,包丁の主要な損傷形態の「刃こぼれ」を考慮できない試験の結果です.したがって,この結果を見て,実際の使用でも「セラミック包丁は切れ味が長持ちする」と結論することは,できません.


★セラミック包丁は「刃こぼれ」が生じやすい
 実際の包丁では,「摩耗」よりも「刃こぼれ」によって,切れ味の持続性能が決まりそうです.刃こぼれのしにくさは,前回の通り,材料の強度で決まります.
 鋼材およびセラミックの強度と硬度を,下図4に示します.横軸は強度(引張強度または曲げ強度),縦軸は硬さ(ビッカース硬さ)です.
<図4>
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 図4において,セラミックの値は,文献[3]の「ジルコニア Z-701N」の値を用いました(この材料は,セラミックとしては強度が最大クラスのものです).また,鋼材の値は,HRCを基準として,文献[4]でHvの値に換算,また文献[5]で引張強度に換算しました.
 なお,ビッカース硬さHvの単位は[GPa]です.古い文献では,単位が[kgf/mm^2]の場合があるので,ご注意ください.
[3]京セラ;セラミックス 材料特性表
http://www.kyocera.co.jp/prdct/fc/product/pdf/material.pdf
[4]鍋屋バイテック;硬さ換算表
http://www.nbk1560.com/technical/pdf/724.pdf
[5]畑村編;続・実際の設計,日刊工業新聞社,(1992)
 図4を見ると,セラミックは,硬度は高いものの,硬度の割に強度は低いことが分かります.すなわち,
 ・一般的なステンレス包丁(SUS420J2,HRC53):強度1660[MPa]
 ・いいステンレス包丁(V金10号,HRC57)  :強度1780[MPa]
 ・セラミック包丁(ジルコニア)     :強度1470[MPa]
 つまり,セラミック包丁は,一般的な(高級でない)ステンレス包丁よりも,強度が劣ります.すなわち,セラミック包丁は,ステンレス鋼や炭素鋼の包丁よりも,「刃こぼれ」が生じやすい可能性があります.


 以上をまとめると,
 ・セラミック包丁は,鋼の包丁に比べて,「摩耗」が生じにくいかは,よく分からない(比較した3種の包丁の刃先形状が不明のため).
 ・セラミック包丁は,鋼の包丁に比べて,刃こぼれが生じやすいと思われる.

 残念ながら,現在のデータから推察する限り,「セラミック包丁は切れ味が長持ちする」とは,結論できそうにありません.


(補足)
 セラミック包丁にも,明らかなメリットはあります.それは,次のような点です.
 ・錆びない.
 ・軽い.
 ・なんだかオシャレ.
 こうしたメリットを重視すれば,セラミック包丁も,捨てたものではありません.特に,「錆びない」ことは,長期間使わなくても切れ味が落ちない点で,有利かもしれません(鋼材の包丁(ステンレス鋼含む)は,放置しておくと錆が進行して,切れ味が落ちていく).


(補足2)
 「セラミックは硬度が高いので,耐摩耗性が高い」という記述も,正しくありません.摩耗には,「アブレシブ摩耗」と「凝着摩耗」の2つの形態がありますが,硬度が関係するのは,アブレシブ摩耗(自分より硬い物質と摩擦することによる摩耗)だけです.しかし,包丁の場合には,相手の物質は食材やまな板ですので,自分より軟らかいです.この場合,摩耗の形態は,「凝着摩耗」になります.凝着摩耗の大小は,「硬度」でなく,「強度」で決まります.
 セラミックの強度は,包丁用の鋼材よりも小さいです.しかし,だからといって,ただちにセラミックの耐摩耗性が劣るとはいえません.摩耗しやすいかどうかは,相手材との親和性(凝着のしやすさ)にも依存するからです.もし,セラミックが金属よりも凝着しにくいならば,耐摩耗性が優れるかもしれません.
 また,金属は表面が錆びると,膨張して脱落しやすいです.このことも,金属の耐摩耗性が低くなる理由と思います.
 以上のように,摩耗のしやすさ・しにくさというのは,複雑で,硬度だけで決まるとは,とても言えません.


【今回の結論】
 「セラミック包丁は切れ味が長持ちする」ことは,うまく説明できませんでした.その理由は,
 ・データが不足していて,「摩耗」が生じにくいかどうか,よく分からない.
 ・セラミックは,鋼材に比べて強度が劣るため,「刃こぼれ」が生じやすいと思われる.


オシャレな育休おじさんには,オシャレなセラミック包丁が似合うかもしれません.
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刃の角度など形状が違えば切れ味が違うのは納得。
言われてみなければ気づきにくいですね・・・。

ところで、なぜ「鋼:炭素鋼のナイフ」を使う? 
包丁使えよ~さらに言うと、いい包丁「材質:SKDで焼き入れてHRC62くらいも可能」「材質:SKHで焼き入れてHRC65くらいも可能」、そんな包丁もあるはず(硬度があがるほど切れ味があがりますが「衝撃に対する強度は落ちる」のが弱点・・・金属加工業界で働いている人は普通に知っている)。
試験データーはツッコミどころ満載(笑)
幸運がよってくる | URL | 2012/01/21/Sat 00:26 [編集]
豚バラ軟骨
マツジョンさん

いつも楽しく拝見しています。豚バラ軟骨は関東人にはなじみのない食材ですが、我が家では人気です。100g当たり65円程度で購入出来るのも「いい肉」の条件ですね。
我が家では七輪で長時間煮て、味は小麦麹味噌、甘味は梨ジャムを使います。ぷりぷりした軟骨が美味しいですね。スペアリブの可食部は少ないですが、豚バラ軟骨は100%食べられるのも家計にやさしいと思います。

セラミックは切削工具にはよいけれど包丁はどうでしょうか?切れ味がお仕着せでユーザーが調整出来ないので使いたくありません。
私の包丁は村の鍛冶屋が鍛えた手作り、材質は不明、鋼をステンレスと鍛接してあります。三層構造が良く分かります。
作業を始める時、包丁を研ぎ上げると集中力が高まります。これがこの包丁の最大のメリットかも知れません。
271828 | URL | 2012/01/21/Sat 17:20 [編集]
> 幸運がよってくる さん
 私も機械部品メーカーに勤めていますので,自社製品の良いデータを見せたい気持ちは分かります.でも,事実の一部だけを取り出して,誤解を与えるようなことは,好ましくないと思うのです.「実用性能」で比較したデータを出してほしいです.

 硬度が高いだけならば,粉末鋼を焼結した包丁があると,聞いたことがあります.HRC66くらいまで,いけるそうです.ただ,硬すぎて研ぎ直しが困難かもしれません.何事も,「ほどほど」が良いですね.
マツジョン | URL | 2012/01/21/Sat 23:18 [編集]
> 271828 さん
 こんばんは.

 豚バラ軟骨は,売っている店が限られてしまいます.熊谷周辺だと,「角上魚類」が一番です.他の店で,100g=38円のものを買ったことがありましたが,臭みが強く,脂が多くて,残念な思いをしました.安すぎてもダメなようです.
 味噌味は,まだ試したことがありません.今度,やってみたいです.
 
 確かに包丁は,研ぐのもひとつの楽しみだと思います.「いい包丁」が手に入りましたので,一生モノのつもりで,大事にしたいと思っています.
マツジョン | URL | 2012/01/21/Sat 23:27 [編集]
セラミック包丁の宣伝の根拠が分かりました。ありがとうございました。使ってみると、用途がかなり限られるかんじです。出刃のような使い方は、折れそうでできません。セラミックの刀剣(人斬り包丁)が存在しないわけです。一方、良い点として、匂い移りが少ないことが挙げられます。これも、単に洗い易いということかもしれませんが、化学反応との関係も考えられます。
Dadebeso | URL | 2012/01/22/Sun 11:12 [編集]
> Dadebeso さん
 セラミック包丁は,スマートな外見で,錆がなく,魅力的なのですが,取り扱いが難しそうです.メインの包丁としては,向かないのかもしれません.
 2本目以降の包丁,例えば果物ナイフを買うことがあれば,セラミックも候補に挙げられるかなあ,と考えています.
マツジョン | URL | 2012/01/22/Sun 23:22 [編集]
セラミック包丁って買ったこと無いから新品を触ったことないんですが、どうも、靭性が無いからあんまり刃先が鋭くないみたいです。もちろん普通に切れる程度の刃先ではあるんでしょうけど。
BRO | URL | 2012/07/27/Fri 11:36 [編集]
> BRO さん
 私も、セラミック包丁は使ったことがありません。我が家は包丁の使い方が荒いので、すぐに折ってしまいそうで、なかなか買う気にはなれません。
マツジョン | URL | 2012/07/28/Sat 22:46 [編集]



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