今日のおじさん、なに食べました? (仮)

妻の料理と、おじさんの毎日の記録です。ほんのり工学テイスト。

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ブラボー,押し切り!~包丁の切れ味も使い方しだい
【今日の料理】 2011/1/21 夕食
 今日は,一日,小雨がパラつく天気でした.雨の中,徒歩で灯油を買いに行き,自転車でレンタルDVDを返却に行きました.雪になるかもしれないので,自動車で出かけるのは避けました.帰りにスポーツジムに寄りましたが,こんな天気にも関わらず,活況でした.運動して,風呂に入って,育休も残りわずか,のんきな生活も,あと少しです.
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★米飯

★スープ,なす

★マカロニグラタン
 「マ・マー」の「マカロニグラタン」を使いました.具は,玉ねぎ・鶏肉・じゃがいも・人参・ほうれん草です.じゃがいもと人参は,離乳食用に圧力鍋で茹でたものを,ほうれん草は別ゆでしたものを,使いました.牛乳の代わりに,豆乳を入れました.
 ちょっと粉っぽく,かつ粘度が緩めになってしまいました.でも,味はOKです.グラタンに限らず,市販ルウものは,粘度と味付けを個別に調整できないのが,難しいところです.

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【今日の料理工学】 ブラボー,押し切り!~包丁の切れ味も使い方しだい
 長らく続けました「包丁編」ですが,今回で最後です.

 今回は,包丁の効果的な使い方,「押し切り」についてです.


★食材が軽く切れる「押し切り」
 私が,日常的に(断続的でなく)料理をするようになったのは,育児休業が始まってからです.昨年(2011年)の2月からですので,ほぼ1年が経過しました.
 恥ずかしいことですが,私が料理を始めたばかりの頃は,包丁で食材を切るとき,常に下図1のように包丁を動かしていました.すなわち,食材の上から,包丁を真下に押し込むようにしていました.この切り方を,「真下切り」と呼ぶことにします..
<図1>
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 料理の経験が多少ある方は,ご存知かと思いますが,このような切断方法だと,あまりうまく切れません.特に,人参などの硬めの食材は,切るのに大きな力が必要になってしまいます.力が必要なので,ぎこちない動作になってしまい,トントン…と,リズミカルな切断ができません.

 包丁について,調べているうちに,「押し切り」というものがある,と知りました.「押し切り」では,下図2のように,包丁を動かします.すなわち,包丁を食材に対して,斜め奥に向けて押し込むようにします.
<図2>
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 この「押し切り」を試してみると,あら不思議.「真下切り」に比べて,ずっと少ない力で,切断ができるように感じます.軽い力で切断できるので,動作がスムーズにできます.「押し切り」を覚えてから,トントン…というリズミカルな切断作業が,どうにか形になりました.
 「押し切り」は,とても便利です.

 なお,「押し切り」のほかに,包丁を手前に引きながら切る「引き切り」もあります.「引き切り」は,肉や刺身などをきれいに切るときに,便利です.


★「押し切り」が軽く切れるのは,なぜ?
 なぜ,「押し切り」だと,「真下切り」よりも,軽い力で切れるのでしょうか.
 
 以前に考察した通り,包丁で食材を切るための力は,次の2つに分けられます.
 a)表面破断力:食材の表面を破断するための力.(詳しくは,→こちらの記事
 b)押し込み力:食材の内部を切り進むための力.(詳しくは,→こちらの記事
 「押し切り」だと,「真下切り」よりも,上の2つの力が,小さくて済むのかもしれません.

 また,包丁を操作するのは,人間です.したがって,実際に包丁にかかる力が同じでも,動作のしやすさなどによって,「押し切り」だと軽く感じる,という可能性もありそうです.

 以上を踏まえると,押し切りだと軽く切れる理由には,次のものがありそうです.
 a)押し切りだと,「表面破断力」を,小さくできる.
 b)押し切りだと,「押し込み力」を,小さくできる.
 c)押し切りの方が,力を入れやすいので,軽く感じる.

 以下で,詳しく考察してみます.


★食材の表面を破断するための力
 まず,食材の表面を破断するための力,「表面破断力」について,考えてみます.(「表面破断力」は,当方が勝手に使用している用語です.グローバルには通じません.)
 包丁の刃先を拡大すると,下図3左のように,ギザギザになっています.いわゆる「ノコ刃」です.(「ノコ刃」の詳細は,→こちらの記事
<図3>
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 この包丁を,食材に押し付けます.そうすると,図3右のように,ノコ刃のいくつかの先端が,食材に当たります.

 ノコ刃と食材の接触部を拡大すると,下図4のようになります.このとき,食材に作用する力は,「真下切り」と「押し切り」で,異なります.すなわち,
 ・真下切り:刃先の押し付け力だけが作用(図4左)
 ・押し切り:刃先の押し付け力+摩擦力が作用(図4右)
<図4>
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 食材が切断するか否かは,刃先の接触部近傍の応力状態によって決まります.真下切りと押し切りでは,作用する力が異なりますので,応力状態も異なります.
 
 食材の応力状態を,「弾性接触理論」で求めてみます.文献[1]を参考に計算しました.本来は,楕円体同士が接触する「点接触」モデルを用いるべきですが,簡便さから,円筒同士が接触する「線接触」モデルを用いました.詳細は異なりますが,概要は同じだと思います.
[1]Johnson;Contact Mechanics,Cambridge,(1985)
 結果を,下図5に示します.横軸は位置(接触部の全幅aに対する比),縦軸は食材表面の応力(横方向成分,最大応力pmaxに対する比.プラスは引張応力,マイナスは圧縮応力)です.次の3通りについて,図示しました.
 ・真下切りの場合
 ・押し切りで,刃先・食材間の摩擦係数μ=0.1の場合
 ・押し切りで,刃先・食材間の摩擦係数μ=0.2の場合
<図5>
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 図5で注目する点は,押し切りだと,包丁の移動方向に対して後ろ側の部分に,「引張応力」が作用する部分が生じる点です.たいていの食材は,圧縮応力よりも,引張応力によって破断する傾向があります(例えば,人参を押しつぶしてもなかなかつぶれないが,曲げると簡単に折れる).押し切りだと,食材表面に引張応力が生じるので,食材が破断しやすくなりそうです.

 以上のように,「押し切り」だと,摩擦力の作用で,食材表面に引張応力が生じます.このため,包丁を押し付ける力が「真下切り」と同じであっても,食材は破断しやすくなると考えられます.すなわち,「押し切り」では,「真下切り」よりも,表面破断力を小さくできそうです.


★食材の内部を切り進むための力
 以前の考察によると,食材の内部を切り進むための力「押し込み力」は,刃先の角度αが小さいほど,小さくできます.
 
 「真下切り」では,包丁を食材に対して,真下に移動させます.したがって,角度αの刃が,そのまま食材に押し込まれていきます(図6の水色部分).
<図6>
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 これに対して,「押し切り」では,包丁は食材に対して,斜めに進みます.このため,食材から見ると,刃先の角度はα’であるように見えます(図6の緑色部分).
 α’<αです.刃先の角度が小さいほど,押し込み力は小さくなります.したがって,押し切りでは,真下切りよりも,押し込み力を小さくできると考えられます.

 以前の記事によると,実際の包丁では,角度α=2~3[deg]でした(2000円包丁の場合.→こちらの記事).そこで,α=3[deg]としてみます.押し切りで,45°方向に包丁を移動させるとすると,幾何学的な関係から,α’=2[deg]となります.
 以前の考察によると,押し込み力は,αの2乗におおむね比例します.したがって,押し切りと真下切りの押し込み力の比は,
 (2[deg]/3[deg])^2≒0.4
となります.すなわち,押し切りでは,押し込み力は,真下切りの約4割にまで低減されると考えられます.

 以上のように,「押し切り」だと,見かけ上,刃先の角度を小さくすることができます.このため,「押し切り」だと,「真下切り」よりも,押し込み力が小さくなります.


★力の入れやすさ
 真下切りと押し切りでは,人間の動作が異なります.どのような違いが生じるかを調べてみます.
 人間の肩から先を,リンク機構として考えました.次のリンクで構成します.
 ・リンク1:肩からヒジまで(上腕),長さ=300mm
 ・リンク2:ヒジから手のひらまで(前腕+手),長さ=350mm
 ・リンク3:手のひらから包丁の先まで,長さ=250mm
 身長が1700mmの人を想定しました.肩の高さ=1400mm,まな板の高さ=800mm,とします.
 肩から350mm前方,まな板から高さ100mmの位置に包丁先端を置いて,切断作業を開始します.真下切りでは真下に,押し切りでは斜め45°方向に,包丁を動かします.包丁は,常に水平を保つとします.

 以上の条件で,切断作業をアニメーションにしました.エクセルのグラフ機能で複数枚の静止画を作図した後,フリーソフトで動画にしました.

 動画の左が真下切り,右が押し切りです.このアニメーションから,次のことが分かります.
 ・真下切りは,押し切りに比べて,腕の動きの範囲が小さい.
 ・押し切りでは,上腕が大きく動いている.

 上腕を動かすのは,肩の筋肉です.肩の筋肉は,ヒジを動かす筋肉に比べて,大きいです.大きい筋肉は,大きい力を簡単に出すことができると考えられます.押し切りでは,肩の筋肉を動員することができるので,食材を簡単に切ることができる可能性があります.
 
 以上のように,「押し切り」では,「真下切り」ではあまり使わない,肩の筋肉を使うようです.肩の筋肉は,ヒジを動かす筋肉よりも大きいので,力を出しやすいと推察されます.


 上述をまとめると,押し切りでは,表面破断力を小さくでき,押し込み力も小さくでき,力を出しやすい動きで作業できます.こうした理由によって,押し切りでは食材を軽く切れるのだと,考えられます.


(補足)
 以上は,「押し切り」についてでした.
 包丁を手前に引きながら切る「引き切り」では,押し切りよりも,包丁を動かす角度が浅くできます.すなわち,包丁が下に移動する量に対して,横に進む量を非常に大きくしやすいです.こうすると,上述の押し込み力を小さくする効果を,より強く得ることができます.これによって,刺身のようなデリケートな食材でも,スムーズに切断できます(腕によりますが).

(補足) 2012/5/3
 「真下切り」だと「押し切り」よりも力が必要、というイメージがある理由として、別の見方もあります。料理に慣れた人は、「押し切り」を人参など比較的切りやすい食材に限定して、また、「真下切り」をカボチャなど手強い食材に限定して、使います。すなわち、真下切りは、固い食材を相手にするときだけ使います。「真下切り」では、包丁の背に左手を当てて押し込むことができるので、固い食材を切るときに有利なのです。
 このような使い分けをしている人の場合は、「真下切り」では、相手にする食材が常に固いので、「真下切りは力がいる」というイメージを持ちやすいかもしれません。つまり、料理に慣れた人の場合、切り方の違いと、食材の違いを、イメージの中で混合しやすいと思われます。このために、「真下切り=力が必要」という印象を持ちやすいかもしれません。


【今回の結論】
 「押し切り」だと,食材を軽く切ることができます.その理由は,
 ・摩擦力の作用により,食材の表面を破断しやすくなる.
 ・見かけの刃先角度が小さくなるので,食材内部を切り進む力が,小さくて済む.
 ・肩の筋肉を使う動作になるので,力を入れやすい.


「押し切り」を初めて試したとき,その効果に感動しました.「ブラボー,押し切り!!」と,叫びたいくらいでしたが,妻がいたのでやめておきました.
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引っ張り応力というのは
なんとなく理解できました。鋼材の強度に硬度とか靭性とか引っ張り強さとか出てくるので。
刃先の細かい凹凸で引っかけてちぎっているという大雑把な理解でいいんでしょうか?
BROさん | URL | 2012/03/18/Sun 09:56 [編集]
> BROさん
 はい。
 凸部分を押し付けてスライドさせて、周囲をちぎりとるようなイメージだと思っています。ここで考えているのは、刃先がまだ食材に食い込んでいない(食材表面にキズがない)状態ですので、「引っかける」というと、少しイメージが違う気がします。
 しかし、食材にキズが付いた後は、このキズに刃先の凹凸が引っかかって、ちぎりとるようになるかもしれません。
 とはいえ、私も実際に見たわけではないので、正しいかどうか分かりませんが。
マツジョン | URL | 2012/03/18/Sun 21:01 [編集]
そうですね、べつに必ずしも引っ掛ける蓋然性はないですね。
包丁のように刃線方向にスライドさせて使う刃物とカンナやカミソリのように刃線と平行にスライドさせて使う刃物は仕上げ方が違うんですが、包丁の刃先に鋸刃をつけるように研ぐのは摩擦係数を上げるためと考えれば理屈がとおりますね。
BROさん | URL | 2012/03/19/Mon 10:45 [編集]
> BRO さん
 同じに見える刃物でも、いろいろあるのですね。
 普段、簡単に「切る」と言いますが、実際には、引きちぎっていたり、穴をあけていたり、削り取っていたり、いろいろな現象があるのだと思います。深く考えてみるほど、面白いものだと思います。
マツジョン | URL | 2012/03/19/Mon 22:11 [編集]



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